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マリッジホワイト

04-05,2009

 それは穏やかな昼下がり。
 風通しの良いリビングには私と彼の二人だけ。柔らかな日差しが部屋全体を温かく包み、ゆっくりとした時間が流れている。
 私は紅茶を楽しみ、彼は読書を楽しんでいる。
 そんな幸せな昼下がり。
 だから私は不安になった。
 絵に描いたような幸せな風景に、夢を見ているような錯覚を抱いたんだと思う。
「本当に私で良かったの?」
 不意にこんな質問を彼に投げかけてしまうなんて、マリッジブルーとは無縁だと思ってた鈍感な私にも、どうやら人並みの神経は通っているらしかった。
 ソファーに寝転び本を読んでいた彼は、意外そうな視線を向けてきた。それから、考え込むように天井を見上げた。
 しばらくして、彼はこう言った。
「君だから良いんだ」
 と。
「まるで禅問答の答えみたいね」
 私は拍子抜けの気分だったのだが、彼は不思議なことなど何もないと言った自然な態度だ。
 突然、彼が居住まいを整え、真っ直ぐ私を見詰めてきた。
「君は……本当に僕で良かったの?」
「……仕返しのつもり?」
「良いから答えてよ」
 私は彼が意地悪で質問のオウム返しをしてきたのだろうと思った。
 だけど、彼の様子は痛く真剣で、どうやら彼の意図は別のところにあるのだと感じた。
 だから、答えについて真剣に考えてみることにした。
 しばし思考する。
 彼との出会いから振り返り、なぜ彼と結婚するに至ったのか理由を探る。
 彼は静かに私の答えを待っている。
 散々考えた末にひとつの答えに辿り着いた。自身が導き出した答えに、思わず笑ってしまった。
「……貴方だから良かったのよ」
 直後、彼も私にそっくりの笑い方をした。
「そういうことさ」
 彼は再び本に目を落とした。
 大事だけれども、今の私たちにとっては意味のない質問だったのだと気づかされた。
 事実、私は彼と結婚するわけで、それが真実で、理由などは重要ではなくて。
 本当にこの相手で良かったのかどうか答えが出るならば、それはきっとずっと先のことで、少なくともそれは今じゃないのだろう。
 とりあえず、今言えることは私は彼と一緒にいられて幸せだってことだ。
 私は彼に向かって微笑む。
「貴方で良かったわ!」
 すると、彼は小さく片手を上げて、ひらひらと振った。
 マリッジブルーはすでに消えてなくなった。変わりにまっさらな気持ちになった。
 新しいシャツに袖を通す時の新鮮な気持ちだ。
 仮に今の気持ちに名前をつけるのならば――マリッジホワイト。
「……なんてね」
 私は飲みかけの紅茶に口をつける。
 私は紅茶を楽しみ、彼は読書を楽しんでいる。
 風通しの良いリビングには私と彼の二人だけ。柔らかな日差しが部屋全体を温かく包み、ゆっくりとした時間が流れている。
 そんな穏やかな昼下がり。

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COMMENT

こんばんは~。ブログ復活おめでとうございます。
そして掌編を読める喜び。良いですね~。うれしいです。
リンクありがとうございました。
これからもよろしくです~。
2009/04/08(水) 21:33:03 |URL|栗田 #T6SIeMlA [EDIT]
栗さんの素早いリアクションに恐縮です。本当にありがたいことだなぁと感謝しております。

どうしてでしょうか?
掌編を書くとなぜだか決まってラノベらしからぬ代物が生まれるんですよ。

……あっ!

長編もそれほどにラノベっぽくない代物でした(;´▽`A``
2009/04/08(水) 22:31:12 |URL|幽人 #bGf9qjkw [EDIT]

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